熱処理の作業例及び熱処理効果

焼きなましの種類と目的

種    類 目    的
内部応力除去焼なまし 鋳造時加工時の残留応力を除去する
チル除去焼なまし 共晶セメンタイトを分解させチル部を除去する
軟化焼なまし 硬さを低めて被削性を増す


【内部応力除去焼なまし】

■作業条件

(イ)昇温
3〜4時間。
(ロ)保持温度
鋳 鉄 品   570±10℃
溶接構造品  620±10℃
(ハ)保持時間
肉厚30oにつき1時間を原則とする。
(ニ)冷却
炉冷とする。
(ホ)取出し
250℃以下で炉外へ取出す。
   

■一般例

内部応力除去

【軟化焼なまし】

■作業条件

(イ)昇温
3〜4時間。
(ロ)保持温度
一般鋳鉄品780〜880℃合金鋳鉄もしくは低温焼なましで不充分な鋳鉄品では800〜900℃とする。
(ハ)保持時間
肉厚30mmにつき30〜60分とする。
(ニ)冷却
炉冷とする。
(ホ)取出し
400℃以下で炉外へ取出す。

■一般例

軟化

焼きならし

【焼ならし(焼準)】

■作業条件

(イ)昇温
2〜3時間。
(ロ)保持温度
900〜950℃とする。低合金鋳鉄及び合金鋳鉄は成分によって温度決定をする。
(ハ)保持時間
肉厚30oにつき1時間。
(ニ)冷却
大気中にて放冷。

■一般例

焼準

【チル除去及び硬度調整焼準】

■作業条件

(イ)昇温
2〜3時間。
(ロ)保持温度
900〜950℃とする。
チルの深いとき又はSi含有量の低いときは高めに取る。
(ハ)保持時間
2〜3時間。
(ニ)冷却
パーライト地にするときは大気中空冷とする。
被削性改善を図る場合には炉冷とする。

■一般例

チル除去

熱処理効果

【FC25における焼鈍前後の応力測定比較】

■例1

(化学成分 T.C 3.2〜3.5%,Si 1.7〜2.2%,Mn 0.7〜1.0%,P 0.1%,S 0.12% Cr 0.15〜0.3%)

As.Cast(鋳放し) Annealing(焼鈍) 応力除去率(%)
-31.5 -2.2 93
-30.3 -1.9 93.7
-26.1 -1.3 95
-32.8 -3.0 90.8
-32.1 -2.9 90.9

(単位:sf/mu 但し圧縮応力を示す)

■熱処理条件

熱処理効果1

■例2

(化学成分 T.C 3.4%,Si 1.9〜2.2%,Mn 0.6〜1.1%,P 0.1%,S 0.1〜0.2% Cr 0.1〜0.4%)

As.Cast(鋳放し) Annealing(焼鈍) 応力除去率(%)
-23.7 -1.8 92.4
-20.0 -1.1 94.5
-24.3 -2.4 90.1
-36.4 ≒0 100
-19.4 ≒0 100

(単位:sf/mu 但し圧縮応力を示す)

■熱処理条件

熱処理効果2


【FCDにおける熱処理効果】

(化学成分 T.C 3.5%,Si 2.75%,Mn 0.35%,P 0.04%,S 0.03% Ni 1.00%)

抗張力(kg/mu) 伸び(%) ブリネル硬度 備考
鋳放し 焼鈍 焼準 油焼入焼戻し 鋳放し 焼鈍 焼準 油焼入焼戻し 鋳放し 焼鈍 焼準 油焼入焼戻し
73.8 46.4 94.2 106.9 6 20 8 4 240 155 275 315 パーライト型
54.9 50.5 55.2 - 4 12 4 1 229 197 213 305 フェライト型
49.3 34.7 57.1 89.1 4.2 10.6 4 1 207 163 246 420 フェライト型
66.2 53.0 76.6 86.1 3 10.6 4.4 - 285 163 288 444 パーライト型
46.2 40.5 48.0 61.5 8.6 13 4.2 - 287 167 290 300 ブルスアイ型

■熱処理条件

熱処理効果3


【鋳鋼における熱処理効果】

(化学成分 T.C 0.36%,Si 0.39%,Mn 0.35%,P 0.21%,S 0.032%)

熱処理 引張り強さ 伸び 絞り 硬さ 降伏点 衝撃値
鋳放し 62.0 15.0 15.55 187 29.9 3.2
930℃炉冷 60.3 25.0 38.8 179 36.2 8.4
930℃空冷 67.5 24.5 39.7 196 38.7 32.4

■熱処理条件

熱処理効果4

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