熱処理の重要性
熱処理とは、金属材料に加熱冷却を施すことをいう。その目的は、金属材料に所要の性質を付与することにより、鋳造品等の「均質化」「鋳造応力の除去」「材質の変化(硬化・軟化)」などを取り除くことにある。即ち、鋳造品等の材料の均一安定化、強度を増す等の目的を達成し得る。
鋳造品を使用する際の信頼度を高める為に、特に「鋳鉄」「鋳鋼」「鋳物」において、熱処理は欠くことの出来ないものである。また、溶接構造品における内部応力の除去という点においても熱処理は重要である。
溶接においては、一般に急熱急冷の局部的融解を伴うので、そのままでは変形や収縮が起こり、降伏点に近い内部応力が溶接部付近に残留しやすい。また溶接熱の影響により母材が局部的に変質することも多い。これらの内部応力を除去することによって「脆性破壊」「疲れ」「応力腐食」に対する抵抗力の増大、構造物の寸法安定化が可能となる。
特に高精度を要する「工作機械」「精密測定機器」などにおいては内部応力除去が重要である。
熱風循環式焼鈍炉(二号炉)
熱処理の基礎知識 (JIS B 6911,JIS G 0201より抜粋)
【焼なまし】
鉄鋼を適当な温度に加熱し、その温度に保持した後除冷する操作。その目的は内部応力の除去・硬さの低下・被削性の向上・冷間加工性の改善・結晶組織の調整あるいは所要の機械的物質的又はその他の性質を得ることなどである。
- 完全焼なまし 鋼の結晶組織を調整し軟化する為、A2又はA1変態点以上の適当な温度に加熱。その後、通常は除冷する熱処理加工。もしくはAr'変態点以上の温度まで冷却し、この温度に恒温変態完了まで保持したのち空冷する熱処理加工をいう。後者の冷却方法によるものを恒温焼なましといい、区別する場合がある。
- 応力除去焼なまし 鉄鋼の残留応力(鋳造応力・内部応力)を除去する為、A1変態点以下の適当な温度に加熱して鍛造・鋳造・機械加工・溶接などで生じた残留応力を除去する焼きまし。
- 軟化焼なまし かたさを一様に低下したあとの塑性加工又は切削加工を容易にする為に Ac1点の上又は下の温度に加熱して行う焼なまし。
【焼ならし】
鋼の前加工の影響を除去し、結晶粒を微細化して機械的性質を改善する為、A3又はAcm変態点以下の適当な温度に加熱した後、通常は大気中に法令する熱処理加工。